あなたは誤用してない?pushの意味とよくある落とし穴と対策
push は「押す」という非常に基本的な英単語ですが、実際の英語運用では 誤用されやすい動詞の一つです。
その原因は、日本語の「プッシュする」という便利な表現と、英語の push が持つ 強さ・圧力・強引さ のニュアンスにズレがあることにあります。
英語の push は、「人の行動を変えさせる」「状況を無理に前進させる」「結果を出させる」といった文脈で使われることが多く、「軽く勧める」「応援する」といった意味では不自然・不適切になる場合も少なくありません。
この記事では、push の代表的な構文・句動詞・誤用例を通して、「使っていい push」「避けたい push」を感覚的に理解できるよう整理しています。
pushの基本定義
pushの動詞の意味
push の動詞の中心的な意味は「外部から力・圧力を加えて、対象を意図した方向へ動かす」ことです。
最も基本的には、物理的に「押す」という意味で使われます。
- push the door
- push the button
しかし英語の push は、物理動作だけにとどまりません。
そこから意味が広がり、
- 人の行動
- 考えや決断
- 計画・状況
を前進させる/無理めに動かす意味で使われます。
このときの重要なポイントは、
- 物事が自然には進んでいない
- 押す側の期待・圧力・意図がある
という点です。
そのため push は、助言(advice)や励まし(encourage)よりも強さ・結果志向・プレッシャーを含む動詞になります。
- push someone to work harder
- push a project forward
- push yourself
はいずれも「優しく勧める」より“やらせる・やり切らせる”方向の表現です。


うん。“自然に進むのを待たない”動詞だと思うと分かりやすいよ。
名詞としてのpushの意味
名詞の push は、動詞の「押す」という行為から派生して、「後押し」「推進力」「最後のひと押し」を意味します。
ここでの push は、長期的な努力(effort)や能力(ability)ではなく、一時的に状況を前に動かす力を指します。
よく使われるのは次のような表現です。
- give someone a push
- a final push
これらには、「もう少しで達成できるが、決定的な一押しが足りない」という直前のニュアンスが含まれます。
- The team needs one more push.(チームにはもう一押し必要だ)
名詞の push は、
- 継続よりも加速
- 積み重ねよりも瞬間的な力
を表す点が特徴です。

名詞だと“努力”とはちょっと違いますね。

そう。“最後に背中を押す力”って感覚が近いね。
pushの読み方と発音
push の発音は /pʊʃ/ です。
カタカナでは「プッシュ」と書かれますが、英語で 短く、詰めて発音します。
発音のポイントは以下の通りです。
- 母音は「ウ」と「オ」の中間
- 語尾の sh は息だけで軽く止める
- 日本語のように長く伸ばさない
感覚としては「プッ・シュ」を一拍で言うイメージです。
また、過去形・過去分詞の pushed は-ed をはっきり発音せず、音は /t/ に近くなります。
- pushed → /pʊʃt/
この詰まった音を出せると、かなり英語らしい発音になります。

push-ed って読んじゃいそう。

実際は pusht って一息で言う感じだね。
pushの句動詞・イディオムで覚える
push someone to … の意味と実践例(人を〜するよう促す)
push someone to + 動詞 は「人に〜するよう強く促す」「圧をかけて行動させる」という意味の構文です。
単なる助言や応援ではなく、
- 期待
- プレッシャー
- 半ば義務に近い感覚
を含むのが最大の特徴です。
- push me to study harder
- push her to take responsibility
この構文では、相手が本来は迷っている/やりたがっていない可能性が前提にあることが多く、「背中を押す」というより“前に押し出す”感覚に近いと言えます。
そのため、encourage(励ます)や advise(助言する)よりも心理的な強さがあります。
- encourage:相手の気持ちを尊重
- push:結果や成長を優先
親・教師・上司など、立場が上の人から下の人への行為として使われやすい構文でもあります。

push someone to … って、結構強引ですね。

そう。“相手のため”でも、圧はちゃんとある表現だよ。
代表的句動詞の違い:push through / push aside / push back の用例
push を使った句動詞は、「どの方向に押すか」で意味が大きく変わります。
push through:
抵抗・反対・困難を押し切って進める
→ 障害がある前提
- push through a plan
- push through difficulties
「簡単ではないが、止まらずに進める」というニュアンスが強く、意志の強さ・強行突破感があります。
push aside:
邪魔なものとして脇に置く/無視する
- push aside fears
- push aside doubts
物理的というより、感情・問題・懸念を一時的に無視するときに使われます。
push back:
押し返す
→ 反論する/延期する
- push back against an idea
- push back the deadline
意見・要求・スケジュールに対して抵抗・拒否・修正を示す表現です。
これらはすべて「押す」という共通イメージを持ちつつ、
- 前に進む
- 横にどける
- 逆方向に返す
という方向性の違いで意味が分かれます。

全部 push なのに、全然意味が違いますね。

“どっちに押してるか”を想像すると整理できるよ。
イディオムの訳し方と落とし穴(直訳NG/意味のズレ)
push を含む表現で最も多いミスは、日本語に直訳しようとすることです。
例えば、
- push back
→ ×「後ろに押す」
→ ○「反論する」「延期する」 - push through
→ ×「押し通る」
→ ○「困難を乗り越えて実行する」
これらは、物理動作ではなく人間関係・交渉・心理状態の比喩として使われます。
特に注意したいのは、push を使うと
- 強引
- 圧がある
- 対立が生まれやすい
という含みが出やすい点です。
日本語の「ちょっと後回しにする」「意見を言い返す」を安易に push back で訳すと、英語では想像以上に強く聞こえる場合があります。
そのため、
- 立場関係
- 感情の強さ
- 場面(会議/日常)
を考えたうえで使うことが重要です。

直訳すると危ない表現が多いですね。

うん。push 系は“力関係”を意識して使うのがコツだよ。
例文で学ぶpushの使い方(日常・ビジネス/名詞・動詞別)
日常会話の例文
日常会話での push は、物理的な「押す」と心理的な「後押し・圧をかける」の両方で使われます。
まず、最もストレートなのが物理的な用法です。
- Don’t push me.(押さないで)
- Push the door harder.(もっと強くドアを押して)
この用法は感情と結びつきやすく、怒り・焦り・苛立ちを伴うことが多いのが特徴です。
一方で、比喩的な用法も日常では非常によく使われます。
- I need a little push to get started.(始めるには少し後押しが必要)
- He pushed me to try it.(彼は私にそれを試すよう強く勧めた)
この場合の push は「応援」というより「行動させるためのきっかけ」に近い意味です。
また、自分に対して使うこともできます。
- I pushed myself to wake up early.(早起きするために自分を追い込んだ)

日常でも、意外とプレッシャーが強いですね。

うん。だから親しい相手ほど、使い方に気をつけて。
ビジネス例文
ビジネスシーンでの push は、成果・締切・判断を前に進める動詞として使われます。
- The manager pushed the team to meet the deadline.(上司はチームに締切厳守を求めた)
- Sales pushed the proposal forward.(営業が提案を前に進めた)
ここでの push は、業務上の責任やプレッシャーを伴い、「強めの要求」として受け取られることが多いです。
名詞としても頻出します。
- We need a final push to close the deal.(契約成立には最後のひと押しが必要)
- The project is in its final push.(プロジェクトは追い込み段階にある)
ただし、対外的な場面では注意が必要です。
push を使うと強引・押し付けがましい印象になることがあるため、
- promote
- support
- encourage
に言い換えたほうが無難な場合もあります。

ビジネスだと push は結構強そうですね。

うん。社内ならOK、社外は慎重が基本だね。
学習フレーズ集:覚えたいフレーズと表現集
ここでは、実際によく使われる push の定番フレーズをニュアンス付きで整理します。
- push yourself(自分を追い込む/限界まで頑張る)
- push for change(変化を強く求める/働きかける)
- push the limits(限界に挑戦する)
- push ahead / push forward(困難があっても前進する)
- push someone too hard(人を追い込みすぎる)
これらの表現に共通するのは、楽ではない・負荷がかかるという感覚です。
push を使うと、「努力」「挑戦」「圧力」といったストレスを伴う状況が自然に立ち上がります。

push のフレーズって、結構ストイックですね。

そう。push は“楽に進む”ときには使わない動詞なんだ。
誤用チェック:よくある落とし穴と具体的な対策
to push 人 to … の構文の意味と典型的な誤用例(ニュアンス解説)
to push 人 to + 動詞 は、「人に〜するよう強く促す/圧をかけて行動させる」という意味の構文です。
この構文の最大の特徴は、
- 相手の自発性が弱い
- 押す側の期待・圧力が前面に出る
という点にあります。
そのため、「親が子に期待する」「上司が部下に成果を求める」といった上下関係でよく使われます。
典型的な誤用1:to の抜け
- × He pushed me study harder.
- ○ He pushed me to study harder.
日本語では「〜するよう押す」と言えるため、不定詞の to を落としがちですが、英語では文法的に不可欠です。
典型的な誤用2:意味の弱さの勘違い
- × He pushed me to relax.(文法的には正しいが不自然)
relax のような「力を抜く行為」と push は相性が悪く、英語では違和感が出やすくなります。
この場合は
- encouraged me to relax
のほうが自然です。

push って、使える動詞が限られますね。

うん。“努力・行動・決断”系と相性がいいよ。
句動詞・フレーズ(push back / push through / push on など)の注意点と例文
push の句動詞で重要なのは、意味よりも“方向”を意識することです。
push back:
- 反論する
- 要求・予定を延期する
- She pushed back against the proposal.
- They pushed back the meeting.
対立・抵抗のニュアンスが強く、丁寧さはあまりありません。
push through:
- 困難や反対を押し切って実行する
- The bill was pushed through despite opposition.
「問題がある前提」で使われ、強行突破感があります。
push on:
- 前進し続ける
- 止まらず進む
- We decided to push on.
困難はあるが、push through ほどの強引さはありません。

全部“押す”なのに、性格が違いますね。

方向+強さで使い分けると間違えにくいよ。
過去形・過去分詞(pushed)の使い方とよくあるミス
push の過去形・過去分詞は pushed です。
よくあるミス1:発音
- × push-ed
- ○ /pʊʃt/(pusht)
-ed を強く読まない点が重要です。
よくあるミス2:受動態の不自然さ
- I was pushed to do it.
文法的には正しいですが、誰が圧をかけたのか不明になるため、やや冷たい・被害的な響きになります。
状況によっては
- I was encouraged to do it.
のほうが自然です。

受動態だとちょっと怖いですね。

push は責任の所在が目立つ動詞だからね。
プッシュする(動詞)とプッシュ(名詞)のすれ違い例:自然な英語表現とは
日本語では「この商品をプッシュする」「企画をプッシュする」のように、動詞・名詞ともに便利に使われます。
しかし、英語で push をそのまま使うと、押し売り・強引・圧力的な印象になることがあります。
- push the product
- push the idea
これらは、内部向け・強い指示なら自然ですが、対外的な文脈では避けたほうが無難です。
自然な言い換えとしては:
- promote a product
- support an idea
- highlight a feature
などがよく使われます。

日本語の“プッシュ”って便利すぎますね。

英語では“強さ”が前に出るから、言い換えが大事だよ。
まとめ
push は、単なる「押す」という意味を超えて、圧力をかけて前に進める動詞です。
- 人に使えば「促す」ではなく「追い立てる」寄り
- 句動詞では「方向」によって意味が大きく変わる
- 日本語の「プッシュする」をそのまま当てはめると不自然
という特徴があります。
そのため push は、便利である一方、使いどころを間違えると強すぎる印象を与えやすい動詞です。
正しく使うためのポイントは、
- 相手との立場関係
- 圧の強さが適切か
- 言い換え(encourage / promote など)の余地があるか
を常に意識することです。

push って、思ってたよりずっと強い言葉なんですね。

そう。“前に進める”けど、“優しく”はない動詞だね。

日本語の“プッシュする”感覚で使うと危ないね。

うん。だからこそ、分かって使えれば表現力は一気に上がるよ


push って、結構強い意味なんですね。